もう20年近くも前の話なので、いまでも適用できるかわからないが、自分が大学生の時に個別指導の塾の講師をしていた時の話。
個別指導では小学生から高校生まで幅広く担当していた。現在は一部上場企業となった大手の個別指導塾である。当時は個別指導というのはもっともっと少なかった気がする。
担当したのは高校2年生の女の子。高校2年の4月から3、4ヶ月ほど担当した。担当科目は数学。
最初の模試での成績は、数学が偏差値50。それが、3、4ヶ月で偏差値70になった。
その方法について紹介。
はじめの授業の印象としては、まさに偏差値50という感じでごく普通だった。。。問題が少し難しくなると全く解けなかった。
自分の経験(失敗談と言った方が良い)から、高校生の塾の授業は意識改革が大事だと思っていた。高校になると、塾の時間が激増する。そして、塾に行くとあんまり聞いていなくてもとりあえずは疲れるので、なんとなく勉強をした気になってしまう(←自分が完全にそうだった)。そして、塾ではだいたい1つの教科を週1回受講することが多いが、予習復習をしなければ、1週間その内容に触れないことになる。1週間前のことなんて覚えているはずがない。まずはここを伝えることからスタートした。
生徒には、
○「高校生になったら自分で勉強するのがメイン。塾で勉強した気になったら絶対に成績は上がらない。」
○「特別な出来事でもない限り、1週間前のことなんて覚えてないよね?」だから「週1回数学の授業をしても絶対に成績は上がらない。」
○塾では、1. 勉強の方向性を修正して、2. どうしてもわからない問題を一緒に解く、3. 自分だけで勉強すると飽きるのでむしろリラックスをしにくる。
などを徹底して伝えた。ようするに、受け身では絶対に成績が上がらないことを伝えるのが第一歩だった。
そして、講師としてやることは何かと言えば、大量の宿題を出すことが最も大事な仕事だった。
最初は1週間で終わらないくらいの膨大な量の宿題を出した。「チャレンジをしたけれど終わりませんでした。」が2週目の授業での返答。もちろん、怒ったりなんてしない。「ごめん、ごめん、多すぎたね。。」と言って、宿題の量は減らすけれど、もちろん大量であることには変わりはない。そうしていくうちに大量の宿題をこなすことに慣れてくる。
そして、毎週宿題を出す最大のポイントは、最低3回は同じ問題を解かせるだった(3回という数字そのものに重要性はない)。
これも上と同じで、一度解法を覚えても1ヶ月もすれば忘れてしまう。せっかく覚えたのに忘れたら意味がない。だから最低3回は同じ問題を行う。
当然生徒も「もう答え覚えてしまっているんですけど、いいんですか?」と聞いてきたが、「むしろ途中経過も含めて全て覚えているくらいでないとダメ」と伝えていた。これも自分の失敗談に由来するもので、自分は問題が解けなくても答えを見て、「ああ、なるほどね」と、答えを見ればわかったという状態で次の問題に進んでしまった。この状態だと、問題集のページ数は進むので、やはり勉強をした気にはなるのだけれど、当然、テスト本番で自分で解けるはずがない。
ということで、
1. 自分で勉強するのがメインという意識改革
↓
2. 大量の宿題を出し、塾では勉強の方向性を決定する。
雑談などをたくさんして、リラックスしてもらうことに務める
↓
3. 宿題は最低3回は同じ問題を出す。
というのを繰り返したら、なんと3、4ヶ月後に偏差値が50から70になってしまった。もちろん、その時の出来にもよるので一概には言えないが、これには二人で喜んだものである(もちろん、塾のスタッフも大喜びだった)。
すべての受験生に適用できるかはわからないが、特に高校生以上には使える方法だと思う。
そしてついでに言うと、自分で自分に必要な勉強・研究・就活の方向性を決定できるようになってもらうのが大学教育の本質であるとも思っている。大学の研究室では専門知識を学ぶのはむしろ付帯的なものであり、時間、空間、予算、労力などのマネジメントを覚えるのが大事であると思っている。
この生徒の担当は、ここで終わってしまったので残念ではあったのだが(1ヶ月ほどアメリカに滞在する予定で、それを機に塾を退職することになっていた)、このように成績を上げさせた経験は、今でも自分にとっても良い思い出となっているし、先生としての楽しさを覚えた出来事の一つにもなっている。
教育は点数がすべてではないし、偏差値ばかりにとらわれる弊害もあるとは思う。しかし、目に見える目標を達成すると自信がついて元気も回復し、次の新しい目標に向かおうという意欲も出てくる(その生徒も受講科目を増やすと言っていた)。現在も大学の研究室で研究指導をしているが、短期間であってもきちんと目標を設定して、それを達成することを目指すのは、とても大事なことであると考えている。
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